山を知り、勘を働かせて獲物を狙う
八代郡氷川町在住、松江睦夫さん(60才)。愛知県の高校へ編入し、大手自動車メーカーへ就職。22才で結婚し3人の子宝に恵まれる。その後、地元・球磨村へ帰郷。27才の頃、本格的に猟を始める。現在は大日本猟友会熊本県氷川支部の副支部長、県の鳥獣保護管理委員として氷川・鏡・千丁地域を担当。
父親の形見の猟犬と銃 猟師のDNAに導かれて
祖父の代から猟師の家系だったという松江睦夫さん。26才の頃に父親が亡くなり、形見として猟犬と銃を譲り受けることになったそうです。それがきっかけとなり、27才の頃、猟師の道を歩み始めることに。
松江さんの猟は、パートナーである猟犬と共に狩りをするスタイル。山に分け入り、鹿や猪などの獲物を狙うのですが、そこで活躍するのが猟犬たち。猟犬には、「噛み止め」「たて犬」などの役割があるそうです。「噛み止め」の犬は、獲物に噛みつき、人間がその場所にたどり着くまでの間、獲物を留めておくのが仕事。獲物にとっても猟犬にとっても、命がけの現場では、相棒の犬が大ケガをしたり、命を落としたりすることもあると言います。近年は、犬にGPSを付けて追跡できるようになりましたが、それ以上に、山を知り、勘を働かせながら犬の鳴き声から状況判断する術も必要。「一刻も早く、犬のところへ向かわなければいけませんので。山道を駆け抜ける脚力と体力が必要。おかげで健康的です!」。
次世代の育成 有害鳥獣保護駆除にも貢献
グループ猟を16年ほど経験した後、単独猟を行なうようになって約15年。その醍醐味は、「一人きりで山に入り、猟犬と共に大物を仕留める瞬間」だと話します。それが一人前の猟師の証でもあるのです。捕獲後は、自ら解体し、販売も行なっています。狩りのシーズンである冬場には、特に脂がのって美味しい猪や鹿が味わえるのだそう。
一方、課題となっているのは、犬を使って猟をする猟師が減少傾向にあること。次世代育成のため、最近はグループ猟にも加わり、若手を指導する機会も。「驚いたことに、娘も猟がしたいと言い出しまして。昨年の1月から一緒に猟に出る機会が増えました」。そう語る松江さんの表情からは喜びが伝わってきました。他にも、「有害鳥獣保護駆除」の活動も大切な任務の一つ。農作物などを荒らす動物を駆除するのが目的で、県からの要請に応じて、鹿や猪、カラス、タヌキなどを駆除するほか、野生鳥獣の生息管理を行なっています。「猟師として培ってきたものが、人のお役に立てるのはうれしいです」。
祖父と父から受け継いだものを、これからは娘や次の世代へと伝えていく。松江さんの目標は、未来へとしっかり繋がっています。
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