「ファクタリング」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。「“債権”を債権買取業者に売る」という意味をもつ「Factor」を名詞化した言葉です。
従来は、中小の企業が、数か月後に支払いを受ける予定の売掛金債権を早く現金化する必要があるときなどに、その債権を債権買取業者に買い取ってもらうということが行われていました。しかし、最近は「給料ファクタリング」などと称して、一般消費者を対象とした業者が目立つようになってきました。今回は注意喚起の意味を込めて、これについてお話します。
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「給料ファクタリング」は、業者が、申し込みをしてきた人の翌月の給料の一部を買い取ることにして、お金(形式上は買い取り代金)を渡し、その人の給料日に手数料を上乗せした額を回収するという仕組みです。外形的には給料債権の売買(債権譲渡契約)ですが、全体的に見れば貸金と同様の金融サービスと言えます。例えば5万円分の給料を買い取ってもらう場合に、受け取る額は4万円で、給料日には5万円を支払う(手数料が1万円)というような業者もおり、これは貸金雄利率として考えるなら、年利300%を超える額になります。なお、貸金の場合の法律上の上限は年利20%です。
この「給料ファクタリング」という仕組みを直接的に規制する法律は現在はありませんが、私は、関連する法律との関係で、グレーな部分が大きい仕組みだと考えています。業者の中には、「給料の前借と同じ」や、「給料の範囲でしか利用できないから安心だ」だとか謳って、顧客を募っているものもあります。しかし、冷静に考えれば、次のような悪循環に陥る可能性が高いことがすぐに分かるはずです。
●今月の給料では不足する
↓
●翌月の給料の一部を業者に買い取ってもらう
↓
●給料日に高額の手数料を付けて支払う
↓
●手元に残る給料が減る(以下、繰り返し。)
高額の手数料を払うため、翌月の給料の不足額は増えることになり、いずれ破綻してしまいます。
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「給料ファクタリング」という仕組みは、今後、大きな社会問題として取り上げられる可能性のあるものであり、安易な利用はするべきではありません。特に、既にある借金の返済のために利用した場合には、数か月以内にほぼ破綻します。借金でお困りの場合には、弁護士などの専門家にご相談ください。
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