今回は次のご相談を考えてみます。
私はもうじき80歳を迎えます。私の妻は75歳で、今は元気にしていますが、私に万が一のことがあった後の妻の生活が心配です。私の財産は、現在妻と住んでいる土地・建物のほか、若干の預貯金があります。
また、私と妻の間には3人の子がおり、それぞれ独立して生活しています。私の亡き後、妻に安心して生活してもらうために、何かいい方法はないでしょうか。
このようなご相談に一般的にお答えしようとすると様々なことが考えられます。財産の生前贈与、遺言の作成、来年4月から施行される配偶者居住権、財産管理契約や任意後見契約などです。
しかし、良くお話をうかがってみると、相談者は次のような希望をお持ちなのがわかりました。
①私が元気なうちは私もこの家に住み続けたい。
②私が死亡した後も、妻が元気なうちは妻が今の家に住み続けられるようにしたい。
③私や妻の判断能力が落ちたり、私たちだけで今の家に住み続けることが難しくなったときは、この家と土地を売って、そのお金を施設代に使ってほしい。
このようなご希望を踏まえると、「民事信託(家族信託)」という方法も有用と考えられます。この制度を使うと、例えば、相談者が元気なうちに土地・建物を相談者の子に信託しておき、信託を受けた子は、相談者とその妻が健康な間はそのまま二人を居住させ、相談者と妻が家に住まなくなったときにはこれを売却して二人の施設代に充てることを、あらかじめ契約で定めておくことが出来ます。元気なうちに自分の意思で財産の活用方法を定めておくことができることや、活用の自由度が法定後見等と比べて高いことなどがメリットと言えます。また、自分が亡くなる前のことを決めておくことができる点で遺言とは異なる機能を持つと同時に、亡くなった後のことを決めておくことができるため、遺言と同様の役目も果たします。
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民事信託は、ここ最近注目され始めている制度であり、あまり馴染みのない方もいらっしゃると思いますが、遺言や任意後見契約だけでは希望が実現しない場合に、一つの解決策となる可能性があります。
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