巻頭特集/日奈久百年通り~新しいものと古いもの

日奈久には創業より百年を超える老舗が7軒あります。

そしてそのうちの5軒が並ぶ通りが“日奈久百年通り”と名付けられました。この名付け親は桑原竹細工店三代目の桑原哲次郎さん。「歴史ある日奈久の通りに“百年”を付けると、その歴史が感じられて行ってみたいと思わせるのでは」という想いから、名付けたそう。

緩やかな時間が流れ、どこか懐かしい気持ちにさせてくれる“日奈久百年通り”。通りには珍しい鍵型のクランクあり、夜通し溢れ出る無料の昔ながらの足湯ありで、ふらっと散策したくなるようなノスタルジーを感じさせてくれます。

日奈久巡りの際には、”日奈久百年通り”にも足を向けてみませんか。

柳屋旅館

明治・大正・昭和初期と、様々な建築様式が融合したレトロな旅館

明治23年から130年続き、現在5代目となる柳屋旅館。

広々とした玄関に一歩足を踏み入れてまず目を引くのが天井に張り巡らされた太い梁。

構造材を見せた造りとなっており、明治時代からそのまま使い続けているその梁の迫力が歴史を物語ります。

旅館の建物全体に散りばめられた欄間や格子の飾りは細部にまで職人のこだわりが感じられ、46畳もある大広間の欄間には松竹梅があしらわれています。また床の間の天井を覗き込めば桜の模様が刻まれており、気づかぬところに遊び心が。

書院造の客間には各部屋それぞれに違ったモチーフのデザインがされており、店主オススメの部屋「青柳」には、飾り障子に宝船が施されておりとても美しく一見の価値ありです。

金波楼

国の有形文化財に登録された由緒ある建築物

金波楼は明治43年に開業。

現在熊本県内に現存する旅館の中で、最大級の木造三階建ての建造物として登録有形文化財、熊本景観賞地域景観賞などの登録・受賞があります。

明治42年(1909年)の九州日日新聞には「九州一の温泉宿」として紹介されるほど。

その名残は今もいたるところにあり、80畳の大広間や桜の廊下など、贅をつくした造りは、「とにかく営利を主眼とせず、旅客の満足を図るが目的なれば、全ての方法設備が理想に近く、以て、日奈久の誇りとするに足るべき大旅館なり」との記事を今もなお伺わせます。

鏡屋旅館・Cafe百年通り

老舗旅館のカフェで癒しのひと時を

木造3階建てのレトロな外観の鏡屋旅館。創業は明治20年で現在132年目に。

当時のままの大きな梁やタイル張りの浴場など一見の価値あり!今でも湯治宿として食材持ち込みで調理は旅館が行うというシステムも健在。

昨年の4月にオープンした併設のカフェは、建物の一部を改装し、中庭の見えるお洒落なスペースとして生まれ変わりました。女将さんの手作りスイーツを中心にクォリティの高い洋菓子が頂ける日奈久の新しい名物カフェです。

武士屋旅館

独自の熱源を持つ、素朴で熱めのお風呂

創業は明治40年ごろで、女将の穗多田さんは4代目。

もともとは仏師の方が始めた「仏師屋」で、読み方をそのまま残し「武士屋」という屋号になったそう。

日奈久温泉の中でも、こちらのお風呂は独自の源泉で、47℃の熱い豊かなお湯がじゃぶじゃぶと溢れ出ています。泉質も塩化ナトリウム泉なのでぬくもりが継続すると評判です。

建物は昭和40年頃に一度立て直されましたが、素朴な佇まいで温泉好きにはたまらないお風呂です。


片山蒲鉾店

昔ながらの製法を親から子へ

大正10年創業。現在99年目、来年1月には100周年を迎えます。
3代目となる店主、母、姉、妻、そして2年前に県外の大学から帰ってきた息子の5人で切り盛りしています。

昔ながらの製法と味を守り続けており、原料は冷凍すり身ではなく鮮魚で仕入れ、お店で捌いて使用。季節や魚の状態によって練り加減や味の調合を微妙に変えています。

ほどよい歯ごたえと柔らかな食感が特徴で、白身魚のほのかな甘みと旨味が口の中いっぱいに広がります。

ちくわやかまぼこだけでなく、オリジナル商品「おにマヨ」も人気です。一口大のすり身の天ぷらの中にタマネギとニンジン、マヨネーズが入っており野菜の苦手な子どもでも美味しく食べられると評判です。

不知火ホテル

ペットとの宿泊もOK! ギャラリーも楽しい和風旅館

昭和36年創業。家族三人で切り盛りするあたたかな和風旅館です。

昭和40年ごろにすぐ隣の日奈久屋旅館さんが店仕舞いしたのをきっかけに、ふたつの建物を統合して改築、現在の形になりました。

ロビーと併設された館内ギャラリーには絵画の他、人形や扇などの様々な和小物が展示されており、華やかさの中にどこか独特な雰囲気があり、つい目が離せなくなります。

大階段には絵本作家の彩樹かれんさんの絵が多数展示されています。
最大の特徴はペット同伴での宿泊が可能(サイズは中型犬まで)ということ。ワンちゃんニャンちゃんに寂しい思いをさせることなくお泊りできます。

25年ほど前から始められたペット宿泊、当時としてもとても珍しいことですが、迷い猫の「おぶんちゃん」を保護したことがきっかけだったそうです。飼い主さんと一緒に泊まることのできるペットたちにとっては立役者的存在です。

桑庵・桑原竹細工店

女将さんとの会話が楽しいラーメン居酒屋。職人技が光る竹細工工芸品も販売。

桑原さん夫妻が営むラーメン店と老舗竹細工店。

桑庵ラーメンは豚骨と野菜スープと一緒に煮込んだコクがあるのにあっさりとした絶品ラーメン。スープは以前日奈久で営業していた「竹文ラーメン」のスープを引き継ぎました。

夜はラーメン居酒屋として地元の方から観光客まであらゆる世代で賑わい、

メニューに無いものもリクエストに応えてくれることもしばしば。店内には116年続く竹細工店の商品も。全てが手作りの、繊細で丁寧な職人技です。

松の湯

人々が集う、憩いの大衆浴場

明治元年に建てられた建物が、当時は佐敷警察署日奈久分署として利用されていた「松の湯」。昭和6年に公衆浴場を開始し、最初の頃は旅館も営んでいました。

昭和40年代に改修工事を行い、平成23年にタイルや床を張り替えたもの、熊本地震の影響をうけたために、風呂場の壁や窓の修理を行いました。

浴場は昔ながらの構造で、浴槽は泉源にできるだけ近づけるために、地面を掘り下げた場所に

古民家キッチン橙

地元食材を使った料理を味わって

昭和初期に建てられたという元茶碗屋の古民家を改築して、平成30年11月にオープンした「古民家キッチン橙」。

松の湯の娘さんご夫婦が、「若い世代の人達にもっと日奈久を訪れてほしい」との想いから開店しました。

ランチ、ディナー共に人気No.1の唐揚げをはじめ、定食が5種類。新メニュー「はちべえトマトのハヤシライス」は八代産完熟トマトの甘さと旨味が存分に味わえる一品です。

日奈久、二見、芦北など地元産の食材にこだわった美味しい料理を食べに、是非お立ち寄りください。

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