あの人に会いたい。File.16

タイと日本をローカルでつなぐ の力で地方に元気と笑顔を

 日本とタイを行き来しながら、タイ料理と全国各地の食とのコラボで、両国のローカルな魅力を引き出し、地域活性化に力を注いでいる西田さん。高校卒業後就職のため上京したものの、働くうちに「このままの人生でいいのか」と疑問を抱くようになり、一念発起して進んだのが空間デザインの道でした。

 デザイン会社での経験を経て、旅に出たタイで新たなインスピレーションを得た“水かけまつり”。「熱気、人々の優しさ、地域の文化、歴史など、目にするもの、肌で感じるもの全てに魅了された」と西田さん。その時に「この地にまた必ず戻って来る」という確かな想いが、今につながっていると言います。

 帰国後はタイレストラン、地域の古き良き伝統を色濃く残した建造物を活用したブライダルプロデュース会社、全国で事業再生などを手掛ける不動産ベンチャーなど様々な仕事を経験。しかし40歳の時に勤めていた会社が経営破綻。人生の岐路に立った西田さんは、「自分でやるしかない」と決断し、2010年にNPO法人『Yum! Yam!SOUL SOUP KITCHIN』を設立。人生のターニングポイントとなったタイと日本各地に点在するローカルの魅力を「食」でつなぎ、地域に元気と笑顔を取り戻す事業には、それまで西田さんが仕事を通して経験したことが全て生かされています。

 

地域課題の解決を事業の柱に 故郷八代の宝“い草”をタイへ

 西田さんの事業は多岐にわたります。日本国内47都道府県の特産品などを生かしたタイ料理のイベントのほか、各県の地域課題を解決に導くものなど様々。故郷八代への想いも強く、世界に誇る特産品い草にもう一度命を吹き込みたいと2014年、い草生産者や地元企業と共に『ゆいのくさ』推進協議会を設立。い草の用途多様性に着目し、敷物や雑貨としてだけでなく、“食べるい草”の機能性など健康的価値と共にタイへ向けて発信しています。

 また現在、タイ国大使館やタイ国政府観光庁、タイ農務省などの協力の下、タイ77県でも日本と同様の産地支援の取り組みを展開。この他、『一帯一路』の高速鉄道開発で農地を失った農家46軒と共に農産物生産加工施設を立ち上げ、地域ブランドを確立する活動にも力を注いでいます。

 「私たちのプロジェクトはハコやモノを作って終わりではなく、伴走することに意義がある」。日本とタイの架け橋となる活動は今後、世界へとフィールドを広げていきます。

 

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●西田誠治さん(53歳)

八代市生まれ。八代南高校(現八代清流高校)卒業後、就職のため上京。働きながら桑沢デザイン研究所で学ぶ。インテリアデザイン会社、タイレストラン、ブライダル関連会社などを経て2010年『YumYamSOUL SOUP KITCHEN』を設立。世田谷区で妻、長女と暮らす。

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