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【旧優生保護法国賠訴訟と「排斥期間」について】

 令和6年7月3日、最高裁判所は、旧優生保護法の規定が憲法13条及び14条1項に違反するとして、この法律に基づいて不妊手術を受けた被害者の損害賠償請求を認める判決を出しました。この判決は、国会が定めた特定の法律が憲法に違反すると判断した点で重要です。また、除斥期間に関する過去の最高裁判所の判断を変更した点でも重要です。

 「除斥期間」とは、一定の期間の経過によって法律上当然に請求権が消滅する制度です。旧優生保護法による被害が発生した当時の民法では、不法行為に基づく損害賠償請求権の除斥期間は不法行為の時から20年とされていました。

 平成元年の最高裁判所の判決では、除斥期間が経過すれば請求権は消滅し、裁判所は当事者からの主張がなくてもこれを認定すべきとされていました。

 しかし、この判断を維持すると、除斥期間が経過していれば、いくら期間内に損害賠償請求を求めることが困難な事情があったとしても、一切、司法的な救済を受けられなくなってしまうという問題が指摘されていました。その後、民法の改正により今後新たに同様の問題が生じないように手当てされましたが、改正民法の施行前に除斥期間が経過していた場合には旧民法が適用されるため、今回のような事案では救済されないのではないかという問題が残っていました。

 そのような中で、令和6年の判決では、平成元年判決を次のように変更し、被害者の救済を図りました。

裁判所が除斥期間による請求権の消滅を認定するには、当事者からの主張が必要である。

請求権が除斥期間の経過により消滅したものとすることが著しく正義・公平の理念に反し、到底容認することができない場合には、裁判所は、当事者からの除斥期間の主張が信義則に反し又は権利の濫用として許されないと判断することができる。

読者の皆さんにとって司法の役割を考える一つの契機となれば、と思いご紹介しました。

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監修/髙橋法律事務所 弁護士 髙橋知寛先生

 

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