運動が苦手だった幼少期 バレエの世界に魅了された初舞台
ピンと伸びた背筋に、しなやかな手足の運び。指の先までも美しさと華やかさが感じられる甲斐田栄さんは、八代市を中心に子どもから高齢者まで幅広い世代に、クラシックバレエの指導やバレエを通した健康づくりのサポートを行う舞踊家です。
運動に長けた幼少期を過ごされたかと思いきや、「子どもの頃は運動がとにかく苦手で、跳び箱も跳べなければ、鉄棒もできません。走れば転がるような子だったんですよ」と笑います。
3人きょうだいの長女だった甲斐田さんに習い事をさせたかった母と、熊本バレエ研究所の門を叩いたのが8歳のとき。「見学のつもりで訪れたその日に、先生の“踊ってみたら”の一言で人生が変わりました」と振り返ります。レオタードに着替え、見よう見まねで体を動かすと、「楽しくて楽しくて。バレエの魅力にはまってしまいました」。
週に2回のレッスンが待ち遠しくて、自宅でも母にクラシックのレコードをかけてもらい、窓ガラスに映る姿を見ながら、自分で振り付けを考えて踊る日々が続いたそうです。
初めての舞台は、モーツァルトの『レ・プティ・リアン』。男の子役でステージに立つと、「煌びやかなライトと鳴りやまない拍手に心が躍り、さらにバレエの世界にのめり込んでいった」と言います。
小学6年の時に、初めて東京のバレエコンクールに出場。「熊本の小さなバレエの世界しか知らなかった私が、世の中にはこんなにもバレエが上手で、全力で打ち込んでいる人がいることを知る機会となりました」。といっても思春期の育ち盛り。「甘い物の誘惑にはすぐに負けてしまい、ぽっちゃり体型からは抜け出せませんでした」。
バレエで培った経験や技術を 多くの人の健康づくりに役立てたい
現在、熊本バレエ研究所の八代と熊本教室のほか、老人ホームや保育園などでも指導に当たる甲斐田さん。2020年からは、椅子を使ったオリジナルのバレエメソッド「バレチェア健康体操」を考案。バレエの動きを取り入れながら、クラシック音楽に合わせて体を動かすエクササイズが好評です。無理なく体幹を鍛えられることで、足腰の弱った高齢者の機能回復につながるなど、バレエを通した健康づくりにも、これまでの経験が生かされています。
「バレエと出合い50年ですが、私のバレエ人生に終わりはありません」と甲斐田さん。新たな技術や文化を取り入れながら、「もっと多くの八代の方々に、バレエを知っていただく機会を増やしていきたいです」。
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●甲斐田 栄さん(56歳)
熊本市出身。九州女学院高校(現ルーテル学院高校)から熊本学園大学短期大学部へ進み、生涯スポーツを専攻。卒業後、熊本バレエ研究所に就職。結婚後八代市へ。舞踊家。クラシックバレエ講師。
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