やつしろ法律相談

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【先日、私の父が亡くなりました。遺言書はなく、父の相続人は母、兄、私の3人です。父の遺産は、自宅の土地・建物と農地のほか、若干の預貯金です。兄の話によれば、生前、農業を営んでいた父には、その経営資金として借りた数百万円の債務が残っているとのことですが、詳しいことは分かりません。兄が父の後を継いで農業を行っていますので、私は相続をしなくてもいいと思っています。この場合、私は、「父の相続を放棄する」ということを紙に書いて兄に渡せばよいのでしょうか。】

 ご相談にあるように「相続を放棄する」ということを書いて他の相続人に渡すだけでは、『相続分の放棄』としての意味はありますが、『相続放棄』の効果は発生しません。この二つは、言葉は似ていますが、その法律上の効果は次のとおり大きく異なります。

◎『相続分の放棄』

 『相続分の放棄』とは、「自分も相続人だけど、自分の取り分はいりません」という意思表示のことを指します。『相続分の放棄』をすることで、相続人同士では、自身の取り分を放棄するという効果が発生します。しかし、相続債権者(亡くなった方にお金を貸していた方など)との関係では、相続人の一人としての義務が残ります。プラスの財産(不動産や預貯金など)は手放すことになるけれど、マイナスの財産(借金などの債務)は引き継ぐことになるわけです。

◎『相続放棄』

 一方、『相続放棄』とは、はじめから相続人ではなかったものとして扱ってもらうための家庭裁判所に対する申述を言います。『相続放棄』によって、はじめから相続人ではなかったことになるため、プラスの財産を手放す結果になりますし、マイナスの財産も引き継ぎません。大事なのは、『相続放棄』をするには、相続を知ったときから原則として3か月以内に、家庭裁判所での手続をとることが必要だということです。

 ご相談の事案では、お父さんには数百万円の借入があったとのことですので、「父の相続を放棄する」旨を書いて兄に渡すだけ(『相続分の放棄』をするだけ)では、債務を引き継ぐことになります。これを避けるためには、期間内に家庭裁判所に相続放棄の手続をとることをおすすめします。

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監修/高橋法律事務所 弁護士 高橋知寛先生

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