2020年06月号
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やつしろの働くひとVol.36
高田焼の伝統を受け継ぎ、新たな試みも
熊本市在住、青木克裕さん(52才)。鎮西高校、九州産業大学造形短期大学部・クラフトコースで学び、1991年に「肥後高田焼伝七窯」(八代郡氷川町)を営む父・修さんに師事。陶芸家の道へ。県美展など入選多数。熊本県伝統工芸協会会員。くまもと伝匠会会員。妻と子ども2人の4人家族
父から子へ受け継がれる高田焼
八代を代表する伝統工芸品「高田焼」(別名、八代焼)の陶芸家である青木克裕さん。八代郡氷川町にある「肥後高田焼 伝七窯」で父の修さん、姉の寿美さんと共に製作に取り組んでいます。短大のクラフトコースで学んだ後、一度福岡のアパレル会社で働きますが、父親の後を継ぐために、陶芸家を志願。幼い頃から、手伝いで土作りをするなど工房で過ごすことが多かった克裕さん。そこでは、陶芸の面白さを知るのと同時に、高田焼の難しさも目の当たりにしたといいます。
高田焼は、象嵌という技法で文様を刻む焼き物です。繊細な技術が求められる上、完成までの工程が多いことでも知られます。原料となる土作りから始まり、成型をし、生乾きの状態で文様を彫り、粘土を埋め、余分な粘土を削り取る象嵌の工程を経て、釉薬をかけて焼き上げる。その技術を受け継ぐことは容易ではありません。陶芸の道へ進んだ理由には、高田焼を生み出す達成感と、伝統を継承したいという思いがありました。
体験教室やカフェにも注目
修行時代は土作りや象嵌の原料作りなど、裏方仕事がメインだったそう。転機が訪れたのは、熊本市にある「フードバル熊本」に工房を出店することになったとき。ここで、工房を任されることになった克裕さんは、高田焼の体験教室をスタートさせました。その後、残念ながら工房は閉店となりましがた、”伝統工芸を伝えていくこと”のやりがいを感じ、氷川町の工房に戻ってからも体験教室(手びねり体験・ろくろ体験、1名から要予約)や、学校や福祉施設などに出向く出張教室を開催しながら、自らの作品作りに取り組み、高田焼の魅力を発信し続けています。
2018年8月には、工房の2階にカフェギャラリーをオープン。料理人の友人から受け継いだ「伝七カレー」を提供し、話題を集めています。もちろん、料理が盛りつけられた器は伝七窯で作られたもの。「手に取っていただき、高田焼を身近に感じてもらえれば嬉しいです。」と話す克裕さん。江戸時代初期から続くとされる高田焼を今に伝える陶芸家として、新たなことにもチャレンジしながら「使い手の声に耳を傾け、人々の暮らしに寄り添う作品を手掛けていきたい」と笑顔で話してくれました。
工房には、象嵌の美しさが際立つ作品がズラリ
陶器の原料となる粘土作りに必要な水甕や網
象嵌の工程は、姉の寿美さんが担当。文様を彫り、白い粘土を埋め込む繊細な作業
釉薬の原料に晩白柚やイ草の灰を使った作品。独特の色合いが出ます。
熊本の伝統工芸のコラボ作品。木工✕陶芸のコーヒードリッパーセット。
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