監修/八代綜合法律相談事務所 弁護士
髙橋 知寛 先生
やつしろ法律相談
― 私と夫の間には2人の子どもがいます。ここ数年、夫との関係が険悪になり、今は離婚や子どもの親権のことについて話し合い中です。
離婚の話し合いを始めた当初は夫も子ども達の親権を主張していたのですが、2週間程前に、夫が子どもの親権は私に任せると言ってきました。そのため、私はその時点で離婚届に署名・押印して、夫に渡してしまいました。しかし、その後、養育費の額について折り合いがつかず、夫は「そんな額を請求するなら、やっぱり親権は俺がもらう」と言って、改めて親権を主張し始めました。私が署名・押印した離婚届は夫が保管したままで返してくれません。夫が離婚届の親権者の欄を「夫」に書き換えて離婚届を提出してしまわないか心配です。
協議離婚をするときには、夫婦二人が署名・押印した離婚届を役場に提出する必要がありますが、協議離婚が有効というには、離婚届を書いたときだけでなく、それを役場に提出するときにも、夫婦の双方に離婚の意思があることが必要とされています。そのため、一旦は二人とも離婚する意思をもって離婚届に署名・押印したけれども、それが役場に提出される前に一方の離婚の意思がなくなっているときには、たとえ役場に届出がされたとしても離婚は無効ということになります。
しかし、役場で離婚届が受理されてしまうと、その離婚が無効だとして戸籍を訂正するには、離婚の無効を確認する調停を申し立てるなどの法的手続きをとらなければならなくなります。
そのため、そもそもこのような問題が生じないようにするためには、あらかじめ役場で離婚届が受理されないようにしてもらう必要があります。それが「離婚届不受理申出」という制度です。
この申出をあらかじめ役場にしておくと、他方の配偶者が離婚届を提出しても、役場でこれを受理しません。この申出は、申出をした本人が取り下げるまでは有効とされてます。提出先は本籍地の役場です。申出の書式は各役場に備えられており、費用は無料です。
今回のご相談の場合も、親権や養育費について話がまとまらない間に離婚届が提出されて、これが受理されることを防ぐためには、あらかじめ離婚届不受理申出をしておくことをお勧めします。
なお、今回は離婚届の場合についてお話ししましたが、同様の不受理申出の制度は、婚姻届、養子縁組届、離縁届、認知届などにも用意されています。ご自分の意思に反する届出がされる可能性があるときには、この制度を利用して、届出が受理されることを防ぐことができます。
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